***Ichiro's malt***


廃業するはずだった蒸留所を立て直し、
2007に世界のコンクールで賞をとったIchiro's malt。
(ワールド ウイスキー アワード2007−Best Japanese single maltと
イノベーター オブ ザ イヤー)

ニッカやサントリーといった大きな会社と並んでの受賞は
快挙といっていいでしょう。

作り手の顔や熱意が伝わる距離感は、これからの日本に必要なことだと思います。

2010には カードシリーズより、
キング オブ ハーツ
シックス オブ クラブス
そして
MWR(ミズナラウッドリザーブ)の3つがそれぞれの部門で受賞。



なぜ?ここを紹介するのか?
実は 中学生時からの常連君が2011春にめでたく就職したからです。

高3の時 「クロワッサンの作れる大学生になりたい」と言いだした彼は、
(大学受験に対するモチベーションをあげたかったらしい)

「国立大学に現役合格したら教えてあげる」
とシェフに言われ,見事合格。

春休みの間, 時間の許す限り、夜中〜シェフに張り付いていました。
(夕方になると疲れと睡魔でへろへろになっていましたが)
最後の日にシェフと並んでクロワッサンを一からつくり、焼き上げたのでした。
がんばってます 焼け具合確認中
それはそれはとても美味しそうに焼き上がりました!

けれど 一口食べてスタッフは沈黙しました。なぜって?
彼が作った物は、、、
たしかに美味しいけれど、シェフのクロワッサンを食べ慣れているスタッフ全員には
違いを感じとれてしまったからです。

納得がいかない彼でした。

彼の焼いたクロワッサンは充分販売できる美味しいレベルでしたから。
でも、周りに促されて
シェフが作ったものを食べてから自分のを食べてみることにしました。

彼の動きが止まったことで 明らかな「差」を感じていることがわかりました。
大きな衝撃だったようです。


味や風味はいくつもの工程のほんの些細なことで差ができます。
同じ材料を使い、横でならんで同じ様に作って一緒に焼いても 
差がはっきり出るのが職人技のすごさであり恐ろしさです。

それをまさに体験した彼は大きなものを得たようでした。

その後、大学院まで学び
募集もされていないのに(!)訪問し、就職してしまいました。

北海道を飛び出した彼は 秩父で懸命に働いています。
「今度 イングランドとスコットランドに出張します!」と報告に来てくれました。

いつか、いろいろな経験をもとに
その地の水や空気を守りつつ、さらによいものを日本から世界に発信することでしょう。

情熱ある若者に、乾杯!!



(追記)2023、春、彼がきました。

「今度、苫小牧にイチローズモルトの醸造所ができます!」

二年後の開業に向けてのプロジェクトリーダーに任命されたそうです。

物作りはゴールがなく修行のようなもの。
まだ最初の一歩ですが彼の情熱に拍手を送りたいとおもいます。

200mlの可愛いのもあります